ヨーストは何ひとつ言っていなかった。フェンが見ると、父も見返していた。しばらくのあいだ、ふたりのどちらも、家族の残りが一週間ずっとあらゆる空白を埋めてきたやり方では――冗談や話題転換や中距離の観察では――その空白を埋めようとしなかった。父は一度口を開いた。重みを後ろに控えた何かを言おうとする男のように。代わりに出てきたのは実務的で、手続き的で、ダイクストラ氏が銀めっきのスプーンに使ったのと同じ声域のものだった。
「獣医の記録が要るぞ。ネルは町の誰かにかかっていたはずだ。昔は、だが。フォルダーを探しておく」
最初の保護団体は二度目の呼び出し音で電話に出た。それが良い徴ではなく悪い徴なのだと、フェンは後になって理解することになる。月曜の朝の空っぽの受信箱がたいてい意味するのは、サーバーが落ちているということであって、世界が一度くらいそっとしておいてくれたということではない。それと同じだった。
「ヨウム、六十一歳、人の手で育てられ、生涯ずっと一つの家庭にいました」フェンは依頼の要旨を読み上げるやり方で、自分の手控えから説明を読み上げた。清潔に、完全に、誰にも推測の余地を残さずに。「亡くなった祖母に強く結びついていました。ストレスがかかると噛みます」
その晩、フェンは公証人事務所で約束のあった獣医のフォルダーについて、ヨーストに電話した。表向きは。回線がつながってみると、自分の中の小さな一部は、この家の外の声を聞く口実が欲しかっただけなのだろうと思えた。父は一分足らずでフォルダーを見つけ、ラミネートのカードから予防接種の日付を、ダイクストラ氏が遺言書に使ったのと同じ平板な声域で読み上げてくれた。向こうでは背後で低くテレビが流れていて、アリスの声が一度だけ短く聞こえ、夕食について何かを尋ね、父は電話から離れてそれに答えてから戻ってきた。フェンは礼を言い、切りかけたところで、軽く訊いてみようと思いついた。おばあちゃんが鳥の旅券の写真のこと、ギルダーのこと、あの何かしらを説明してくれた覚えはあるか、と。
「いや、あまり」とヨーストは言った。その問いに本当の考慮が要ったにしては、速すぎた。「シーンに訊くしかないな。わたしよりよく覚えているだろう」間。短く、これより軽い会話でなら何でもないものとして通ったかもしれない間だった。「仕分けは進んでいるのか」
フェンは流した。父にたいして物事を流すことを学んできたやり方で。そして会話をまた転貸のほうへ舵取りした。しばらくのあいだ、晩餐は楽な律動を取り戻した。皿が下げられ、コーヒーが注がれ、ヨーストは同僚の悲惨な自宅改装の話をした。終わりごろには本物に可笑しくなるだけの長さのある話で、浴室の床のタイルを丸ごと逆向きに貼り、主義として、それを認めることを拒んだ下請け業者が登場した。食卓のあの瞬間をほとんど忘れかけたころ、フェンは軽く訊いてみた。子供のころの、おばあちゃんの古い言い回しを何か覚えていないか、と。純粋に会話としての、こわばった録音の最初の十分をほぐすためなら、どの取材相手にもする類いの問いだった。
「いや、あまり」とヨーストは言った。「ずいぶん昔のことだ」
シカゴの大家は四度目の呼び出し音で出た。すでに半分、回線の向こうで起きている何か別のことに気を取られていた。転貸の願い出を、フェンが身構えていたよりも摩擦なく受け取った。
「そのつもりです。もっと長くなるかもしれません」その数字が口を離れるのをフェンは聞き、その大きさは遠くからしか届かなかった。ひと月前、公証人事務所の駐車場に立って、いとこに、本当にいい、と言っていたときに自分へ信じさせていたよりも、かなり大きな何かに、自分はすでに身を入れてしまっていた。「家族の事情で。込み入っていて」
うちの母さんは、食べたくもない夕食を前に何時間も食卓に座らせる人でね、あたしたちはどうでもいいことで言い争って、そのうちどちらかが、止めるためだけに、息の下でもう片方へ言い始めたんだ。
スカヴォ。お座り、お食べ、おやめ。母さんに効いたことは一度もないが、あたしたちには効いた。もっとも母さんは一度も聞きつけなかったし、聞きつけたところで気にもしなかっただろうけどね」
フェンは注釈を備考の列へ、速く、打ち込んだ。三週間空欄のままだった場所を、本物の記載の形がようやく埋めていった。カーソルは、試み始めて以来初めて、疑問符ではなく実際の定義の末尾で明滅していた。「じゃあ、プレンドは」
まず金切り声が来た。長い、昇っていく一音で、閉まった扉をまっすぐ突き抜けて、食卓の水のグラスを鳴らした。すぐ続いて、あの速射の音節。もう何度も聞いて、悪態の等級のどれかだとは聞き分けられるようになっていたが、その瞬間、どの等級かをゲイブに告げることは、フェンには本当にできなかった。ゲイブのフォークが口までの中途で止まった。フェンの顔じゅうが熱くなった。念入りに組み上げた晩が、持ちこたえてほしいと願っていたまさにその縫い目からほどけていくのを見ながら。まる一秒、ふたりのどちらも何ひとつ言わなかった。金切り声のあとの、耳鳴りのする急な静けさの中に座って。車の警報がようやく切れたあとの部屋に、人が座っているやり方で。
「あれは、その」フェンは立ち上がりながら、頭の中ではもう詫びを組み立てていた。こじれた依頼主との通話を終わらせるときに使ったはずの、あの清潔で職業的な抑揚で。彼を丁重に玄関まで送り、ふたりとも二度とこのことに触れない版の晩へ、もう手を伸ばしかけていた。「あれはブルーノで。わたし、ちょっと――」
コリー・ブームスマは二本向こうの通りに住んでいた。子供のころのフェンが、番地を知る必要など一度もないまま千回は前を歩いた家だった。クラーヴァー家の者がノックすれば、どちらの側にも儀式ひとつ要らずに、台所の扉がただ開く類いの隣人。フェンは午前十時に、片手にレコーダー、片手に質問の一覧を持って着いた。どの取材にも臨むとおり、職業的に、整然と。コリーは、フェンが玄関マットを越える前に、その姿を見て笑った。
「おやおや、ねえ、そんなものは仕舞って。お入り、お座り、コーヒーが沸いてるよ」
「ちゃんと録音させてください。よければ。正確さのために」
帰りの車で、フェンはまたリッケルトの番号を試した。電話をカップホルダーに立てかけ、四回の呼び出し音を待ちながら。案件が名前を得た夜の、あの十一時四十分の初回以来、四度目の試行だった。あいだの数週間には、記録して応答のなかった二回が挟まっている。もう覚えるつもりもなく覚えてしまった、同じ平板な自動応答の挨拶。「出られません」という語のところで録音の声が小さく引っかかる、その引っかかりまで。今回は伝言を残した。意図して短く。圧は乗せず、名前と折り返しの番号と、シーンがあなたを懐かしそうに話していた、という一行だけ。それは本当のことだったし、直球の頼みよりは柔らかく着地するかもしれないと、大した自信もなく願った。
折り返しは期待しなかった。期待しなかったのは、正しかった。
「実はさ、あれを親父が自分の結婚式で言った、って話があるんだ」彼は首の後ろをさすった。「仕出し屋が二時間遅れで、しかも違うケーキを持って現れて、おふくろが二百人の招待客の前で泣き出す寸前の顔になったとき」宴会場は丸ごと静まり返り、この一日が生き延びられるのかどうか、見届けようとしていたという。
「親父はただ言ったんだ。真っ平らに、ホプラ・ヴァスト、って。奥の卓まで届く声量でな。それで会場じゅうが笑った」と彼は言った。「おふくろも笑った。写真屋が捉えるくらい強く」