配給の一時間

〈もしも〉シリーズ

配給の一時間

死者に許された時間は、わずか六十分。スアがこれまでに使ったのは、六分二秒。

制作中

物語

この一冊で待つもの

近未来のソウル。意識のインプリント(転写)技術により、遺された人々は死者とちょうど一時間だけ言葉を交わすことができる。その時間は何年にもわたって分割して使うことができるが、決して補充されることはない。カウンターがゼロを示したとき、その記録は永遠に消え去る。

ハン・スアは、遺族たちがその「時間の割り算」を乗り越える手助けを日々行っている。インプリント・クリニックの職員として、部屋を整え、悲しみに暮れる来訪者を落ち着かせ、なぜこのシステムに「制限」が組み込まれているのかを説明する術を熟知していた。しかし、亡き母のインプリントを避けたまま三年間を過ごしている。手つかずの残り時間は、五十三分五十八秒。

そんなある日、サーバー移行の通知が届く。データの移転に伴い、スアが録音を再生して起動するまでに残された猶予は、わずか三十日。それを過ぎれば、残された時間はすべて失われてしまう。

時を同じくして、スアは不治の病を抱える九歳の少女、ユナの担当になる。ユナは残される父親のために、自らのインプリントを準備していた。学校のノートに書いた対話のテーマを一つずつ消し込み、真実味のない言葉はすべて拒絶しながら、少女は自らに与えられた一時間を冷徹なまでに正確に組み立てていく。そしてユナは、スアが答えられない問いを投げかける。「失うのが怖くて使えないなら、どうして時間を残しておくの?」

期限が刻一刻と迫り、ユナの記録が完成に近づくなか、スアは選択を迫られる。何を問いかけ、何を聴くべきか。そして、どれだけの未来を差し出す覚悟があるのか。なぜなら、ため込んだ時間もいつかは尽きるものであり、最後の会話とは、永遠に別れを告げないためのもう一つの手段になり得るのだから。

喪失の痛み、仕組まれた制限、そして一秒ごとに代償が伴う世界で「今」を生きることを描いた、静かに胸を揺さぶる思弁小説。

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作品情報

シリーズ
〈もしも〉シリーズ
入手状況
制作中
言語
日本語
出版社
LPH98.lifestyle
著者
L.P.H. Nordhaven
読む順番
一冊で完結する小説