忘れられた音の地図師

〈もしも〉シリーズ

忘れられた音の地図師

ジュノ・メルシエは音を描く。描き終えた瞬間、その音は世界から消える。

刊行言語 English, Nederlands

物語

この一冊で待つもの

路面電車のブレーキ音は、錆びた尾根のよう。静寂は陥没穴のように口を開ける。

近未来のブリュッセルで、ジュノは消えゆく音を風景として地図に描いている。博物館はそれを保存し、企業は郷愁を売る。だが、完成した地図はひとつひとつ、その音を生きた空気から抹消していく。次の依頼は、ジュノ自身のコレクションにあった私的な録音だった。

記憶と所有、そして保存がひっそりと奪っていくものを描く感覚文学の小説である。

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選び抜いた一節

作品の声と感情の引力が伝わりながら、すべてを変える転換点は明かさないページを選びました。

第一章 七番路面電車 · page 1 of 10

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レンは、アパートが浸水するか AAC のソフトが落ちるかしない限り、電話はしなかった。レンは文字を打った。正確には、タブレットで組み、その言葉が、斜体も詫びもない平らな書体でジュノの画面に届いた。

声に出せば十音節に満たない。硝子の上では二語。挨拶なし、絵文字なし、和らげなし。病院の年月がふたりから礼儀を焼き尽くしたあと、ジュノはこの子を率直に育てた。

彼女は打った。「うん。七時。スープを持っていく」

作品情報

シリーズ
〈もしも〉シリーズ
入手状況
刊行言語 English, Nederlands
言語
日本語
出版社
LPH98.lifestyle
著者
L.P.H. Nordhaven
読む順番
一冊で完結する小説