
物語
この一冊で待つもの
サナアの古い家々には、小さなブリキの鐘があり、その綱には家族の名が記されている。戦争で住民が散り散りになっても、鐘は鳴り続けた。ハディヤは鐘の番人となった。日暮れに一巡し、一軒につき一度綱を引き、力強い音で不在の家族とその扉をつなぎ留める。
澄んだ音なら、家族の物語はまだ終わっていない。虚ろな音なら、もう誰もいない。
娘ナワルの鐘は、いつも澄んでいた。それがハディヤに届く唯一の便りだ。彼女はその音に、音が約束できる以上のものを求めないことで人生を築いてきた。
だが今、路地に虚ろな音が紛れ込んだ。
ハディヤには、その家が見つけられない。風と石と記憶が、音を壁から壁へ投げ返す。正しい綱を見つけるまで、すべての鐘が同じ恐ろしい可能性を秘めている。
注意を向けることで家族の声が保たれる街区で、一人の老女は、沈黙が代わりに答えを選ぶ前に、悲しみと距離を聞き分けられるだろうか。
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作品情報
- シリーズ
- 〈もしも〉シリーズ
- 入手状況
- 制作中
- 言語
- 日本語
- 出版社
- LPH98.lifestyle
- 著者
- L.P.H. Nordhaven
- 読む順番
- 一冊で完結する小説


