届かぬ慰めの局

〈もしも〉シリーズ

届かぬ慰めの局

局が届けられない弔意は、ただひとつ。マレン・オコイェが四年間待ちつづけている、その一通だけだ。

刊行言語 English

物語

この一冊で待つもの

悲しみの起こる場所ならどこへでも、エレベーターひと乗りで通じる。そこでは書記官たちが、別様に展開した人生から届く便りを処理している。七C号様式が運ぶのは、受取人のほうが死に、別の誰かが生き残って喪に服している分岐世界からの弔意だ。

マレン・オコイェは規則を知り尽くしている。何千というありえない喪失を目録に収めながら、妹イマニがまだ生きている分岐だけは、想像することを自らに禁じてきた。

そこへ、経路の誤りがひとつ。封緘された妹の七C号様式が、マレンの配達鞄に紛れ込む。

非再帰の規則は、それを自分自身へ届けることを禁じている。宛名欄が見知らぬ他人の悲しみへと定まっていくにつれ、慣れ親しんだ局の地理が、届けられない言葉のまわりで軋みはじめる。悲しみに経路を与えてくれる組織か、その組織がずっと拒みつづけてきた慰めか。マレンは選ばなければならない。

並行する人生、制度の慈悲、そしてどんな仕組みも安全には届けられない言葉をめぐる、奇妙であたたかな長編小説。

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選び抜いた一節

作品の声と感情の引力が伝わりながら、すべてを変える転換点は明かさないページを選びました。

序章 七階 · page 1 of 10

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マレンは外套を脱がずに自分の持ち場へ渡り、名札の下の鉤に鞄を掛け、最初の書類挟みを開いた。

十一C分岐。六十二歳の女性で、その分岐で息子を葬っていた。彼女は葬儀のあとの九か月を、息子が生きているあいだ一度も言わなかった一文を組み立てることに費やした。結婚式の招待客の名簿をめぐる言い争いは、一度も名簿についてのものではなかった、という一文を。マレンはその様式を一度読んだ。照合。写真の一致、受取人は存命、分岐の表記は判読可能。彼女は「受領」を押し、発送の山に置いた。

二つ目の書類挟み。四E分岐。ある男が、かつての同僚に、二〇〇九年に自分が取った企画の功績と、その後十一年悔いてきたことについて書いていた。詫びが届く前に彼女が死んだ分岐で。押印、それから山へ。

作品情報

シリーズ
〈もしも〉シリーズ
入手状況
刊行言語 English
言語
日本語
出版社
LPH98.lifestyle
著者
L.P.H. Nordhaven
読む順番
一冊で完結する小説