
物語
この一冊で待つもの
ブリュッセルの公文書館員ヌール・デミルは、真鍮の留め金がついた祖母の革装の日記帳を相続する。代々の家族がその中に、同じ問いへの答えを書き残してきた。「お前が最も必要とするものは何か?」――ただし、その答えは意図的に間違ったものでなければならない。真実をページに記すことは、決して許されないのだ。
ヌールは伝承ではなく、確かな文書とともに生きてきた。しかし、日記に綴られた嘘は、次第に実在の場所と重なり始める。消えた村、リスボンの移民局、そして何の意味もないはずのブリュッセルの住所。傷だらけの写真と公印の跡が指し示すのは、1915年に一族の記録から名前が消えた一人の子供の存在だった。
五代にわたる「まちがった答え」を追ううちに、ヌールはこの日記が決して単なる遊びなどではなかったと知る。ヌールの先祖たちは、権力者が求める言葉を書き連ねる一方で、決して失ってはならないものを隠し通すことで生き延びてきたのだ。その嘘は、ある人物を守った。そして同時に、ヌールの存在を消し去っていた。
今や、いとこは日記を売ろうとし、親族はその意味をめぐって対立している。そして新たな文書が見つかるたびに、同じ危険が浮き彫りになる。一つの遺産を修復する真実が、もう一つの遺産を引き裂いてしまうかもしれないという危険が。
記録を終わらせるため、ヌールは決断を迫られる。一族を生き延びさせてきた掟に従うべきか、それとも、決して口にしてはならないと禁じられてきた「答え」を書き記す、最初の守護者となるべきか。
受け継がれた沈黙、官僚的な暴力、そして、ようやく安全が訪れたときに初めて語られる家族の真実を描き出す、心に迫る文学的ミステリ。
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作品情報
- シリーズ
- 〈来歴〉シリーズ
- 入手状況
- 制作中
- 言語
- 日本語
- 出版社
- LPH98.lifestyle
- 著者
- L.P.H. Nordhaven
- 読む順番
- 一冊で完結する小説


